平成16年度行事報告 ◎関連読書講座 テーマ:「実篤をめぐる日記を読む」(2回連続) 講師:伊藤陽子(当館主任学芸員) 日時:4月24日・5月8日(日曜日) 午後1時30分から3時30分 会場:旧実篤邸内講座室 特別展「日記に読む実篤」と連動して読書講座を開催しました。 第一回では実篤の日記、第二回では友人達の日記を取り上げ、それぞれの日記からの引用をテキストとして読み込みました。 この講座では、朗読や、また自筆を読む体験を通して、活字では分からない文字の表情から伝わることや、記述者による日記への態度や文体の特徴などを実感していただくよう心がけました。 読む機会の少ない日記ですが、講座を通じて文学作品とは違った面白さをご紹介しました。 ◎邦楽ミニコンサート 日時:6月5日(土曜日)  午後2時から3時 会場:実篤記念館 出演:邦楽アンサンブル 花筏 演奏曲目:春の海、夏の思い出、さくら変奏曲、沖縄メドレーなど 普段邦楽の演奏を聴く機会の少ないこともあって、多くの来館者がありました。新緑とさわやかな初夏の風のなかで、邦楽の調べを堪能したひと時でした。 ◎作ってみよう!(ジャム作り) 日時:6月12日(土曜日)・13日(日曜日) 午後1時から4時 ※同内容で2回開催 講師:伊藤陽子(当館主任学芸員) 会場:実篤記念館、調布市東部公民館 今年は梅の実のなりが少なかったのですが、それでも一人数粒ずつ収穫し、不足分は新しき村から譲っていただいて調理しました。 二年目の今回は、定員に対して二倍以上の応募がありました。二日間で28人の参加者には、当館の利用経験がなかった方も多く、利用者層が広がる効果がありました。 ◎作ってみよう!「私だけの絵本」 日時:7月31日(土曜日)・8月1日(日曜日)午後1時30分から3時30分、 8月5日(木曜日)午後2時から4時 講師:田尾明敏氏(NPO美術研究センター理事)、岡野暢夫氏(製本工房リーブル主催) 会場:実篤記念館、調布市東部公民館 7歳から11歳まで15人が参加しました。事前に手引きを配布して内容を考えてきてもらい、前半二回は絵画指導を受けながら本文をかき、三回目に製本して本の形に仕上げました。 でき上がった絵本はそれぞれ個性的で楽しく、終了後の8月17日から27日、閲覧室に展示された作品は来館者の注目を集めていました。 ◎「実篤に挑戦!〜筆と墨で絵をかこう〜」(春・夏) 5月は52名、8月は83名が参加しました。「挑戦」も今夏で八回目、すっかり記念館の恒例行事となりました。繰り返しご参加いただいている方々も多く見受けられます。野菜や花を「よく見ること」で得られる発見を、口々に語っていかれました。 作品は、9月21日から9月5日まで記念館に展示。 ◎「実篤に挑戦!《特別篇》・・・うちわに筆と墨で絵をかこう」 講師:菱沼陽土女氏(絵画講師) 日時:8月22日(日曜日) 午前10時から12時、午後1時30分から3時30分 ※同内容で2回開催 会場:実篤記念館 6歳から大人まで、午前・午後あわせて31名が参加しました。今回は定員に対して二倍以上の応募がありました。先生から線の描き方、色の作り方などの指導を受けながら「うちわ」に絵を描き、仕上げに落款を押すと、絵もぐっと引き締まりました。 ◎夏休みウィーク「見て、感じ、不思議を調べよう!―自由研究サポート―」 期間:8月25日(水曜日)から29日(日曜日) 午前10時から午後4時 会場:実篤記念館 今年度はじめての試みとして、夏休み自由研究のサポート講座を企画しました。 実篤や白樺派についてはもちろん、日頃から記念館の活動をサポートしていただいている、個性豊かな協力ボランティアの方々等の協力を得て、実篤公園周辺の昆虫や動・植物、調布や仙川の地理・歴史、公園での写生といったことにも幅広く対応できるように企画しました。また、期間中は子ども向けの図鑑や、調布市で採集した昆虫の標本(調布市郷土博物館蔵)も用意しました。 小学一年生から大学四年生まで、五日間で35名が参加しました。利用が進むにはまだ少し時間がかかりそうですが、それでも、昆虫標本を写生したり、図鑑で名称を調べたり、実篤について資料を集めたりしていく子どもがみられました。 各催しでは、協力ボランティアの方々に、会場設営や受付、運営をお手伝いいただいています。 ◎児童・生徒向け発行物のご案内 児童・生徒向けの展覧会や、お絵かきや工作などの講座を開催している実篤記念館と、豊かな自然の中で草木や虫を観察できる実篤公園を、小中学生にももっと知って貰うために、ご案内を作りました。 また、学習の補助となるよう、解説シート「もっと知りたい 武者小路実篤」を発行しています。 昨年までに作成したNo.1から15には、実篤の生涯と活動の紹介や、代表作を読むためのガイドのほか、遊びながら記念館や公園を見学できるワークシートもあります。 今年度新しく作ったNo.16から18では「ともだち」「がんばって!」「のびのび」をテーマに詩をとりあげ、実篤のメッセージを紹介しています。 いずれも無料で配布しています。学校や家庭でも学習などにお役立てください。 ◎秋の特別展「ポスターの美」記念講演会 テーマ:「白樺派とメディア」 講師:紅野謙介氏(日本大学文理学部教授) 日時:11月23日(火曜日・祝日)  午後1時30分から3時 場所:調布市東部公民館 展覧会に出品された作品、資料をふまえ、明治43年の『白樺』創刊号において、巻頭に武者小路の「「それから」に就て」を掲載したことは、既存の文学に新しい自分たちを認めさせるきっかけを与えたメディア戦略であると解説。また、文学者の出版、広告事情などを紹介。 今回、新しい視点として、武者小路実篤や白樺派の人たちが、大量広告とその過剰消費時代を迎える関東大震災以前に、すでにしっかりとした形で経済活動をしながら、自分たちの夢や希望を実現していったというように考え直す必要があることを指摘されました。 わかりやすく示唆に富んだ講演内容は、参加者から好評をいただきました。 この講演は記録集にまとめましたので、当館閲覧室で読むことができます。 ◎読書講座「武者小路実篤の「カチカチ山」と「花咲爺」―昔話をもとにした童話劇をよむ―」(3回連続) 講師:瀧田浩氏(二松学舎大学非常勤講師) 日時:平成16年9月12日・26日・10月3日(日曜日)  午後1時30分から3時30分 会場:旧実篤邸内講座室 同じ昔話を元にした太宰治、巖谷小波の作品と比較しながら、実篤作品では、資本主義が急速に導入された発表当時の社会のひずみや、単純に善悪で割り切れない人間存在の複雑さが盛り込まれ、現代小説としての性格を合わせ持ち、実篤本来の生命主義が強く著されていることを学び、作品理解を深めました。 ◎美術鑑賞講座「実篤から始めようからマティス展を観る」(2回連続) 講師:下向惠子氏(画家) 日時:平成16年9月29日・10月6日(水曜日)  午後1時から3時 会場:実篤記念館、国立西洋美術館(東京・上野) 講座の一回目では、講師の下向氏に画家としての視点から「マティス展」(国立西洋美術館)鑑賞のポイントをお話しいただきました。また、マティスの切り絵作品の色彩感覚やバランス感覚をより深く理解するために小さなワークショップも行いました。このワークショップは好評で、完成作品は平成16年12月から平成17年3月まで記念館に展示しました。 講座の二回目には講師と共に「マティス展」を鑑賞し、終了後、簡単なレポート「わたしの選んだ一点」を提出していただきました。 ◎講座 作ってみよう 講師:渡邉由美子氏(ねこじゃらし代表) 日時:平成16年11月13日(土曜日)  午後1時から3時 会場:実篤公園および実篤記念館 実篤公園の植物を使って工作を楽しむ恒例の講座。今回は「通年で手に入りやすい植物」をテーマに、シュロの葉のバッタ、ヤツデのお面、笹の入れ物などを作りました。身近な植物を使って、特別な道具を用意しなくても楽しめる工作があることに、大人・子どもを問わずご好評をいただきました。とりわけバッタは本物そっくりの出来ばえでした。 ◎実篤公園自然観察会(秋) 講師:冨田 広氏(ナチュラリスト・自然観察指導者) 日時:平成16年11月20日(土曜日)  午前10時から午後3時30分 会場:実篤公園および周辺緑地 講師の冨田氏の解説を聞き、普段は見逃しがちな植物の特徴などを観察しながら、武蔵野の面影残る実篤公園やその周辺緑地を歩きました。 今回は午前・午後を通して実施し、散策は長時間にわたりましたが、解説は植物学的な話にとどまらず、植物の名前の由来や生活・文化に結びつけた話など多岐にわたり、受講者を飽きさせませんでした。 また、手入れをした雑木林と、そうでない雑木林を比較し、実篤公園の自然をどのように残すかという問題とも関連する、示唆に富んだお話も伺うことができました。 ◎第2回文学コンサートin実篤記念館 解説:関田英二氏(桐朋学園大学音楽学部助教授) 日時:平成16年11月27日(土曜日) 会場:実篤記念館 今回は「ギターと歌で語る文学の世界」と題して、実篤が活躍した大正時代の代表的な音楽である、「カチューシャの唄」や「ゴンドラの唄」などを演奏していただきました。聴くものの心を癒してくれるひと時でした。用意した椅子席の数を上回る、68名の参加者がありました。 ◎製本講座(4回連続) 講師:岡野暢夫氏(製本工房リーブル) 日時:平成17年1月19日・2月2日・16日・3月2日(水曜日) 会場:実篤記念館、調布市東部公民館 製本の基礎として、文庫本の改装、見開き製本、平綴じ、和綴じの四種類の製本を学ぶ講座。文庫本の改装では、実篤作品の古い文庫本を提供して作品に親しんでいただく機会とし、その他の製本では、思い思いに中身を作成しました。 当初はカッターの使い方などに戸惑いながらも、講座の回数が重なるにつれて次第に慣れていきました。完成した作品は3月15日(火曜日)から4月14日(水曜日)の間、記念館閲覧室に展示。 なお、講座の実施にあたっては、昨年の製本講座を経験した協力ボランティアにもアシスタントをお願いしました。 ◎読書講座「原田宗典、武者小路実篤を朗読する」(4回連続) 講師:原田宗典氏(作家) 日時:平成17年2月5日・12日・19日・26日(土曜日) 午後1時30分から3時 会場:調布市東部公民館 初回から三回にわたって原田氏やゲストの俳優の方々との朗読で実篤作品に親しみ、最終回には原田氏と受講者の対話になる形で戯曲を朗読しました。 講座では、朗読で活字からは分からなかったニュアンスに気づき、ビートルズと実篤の共通点に驚くなど、新鮮な発見がありました。また実篤にシュールな戯曲や共鳴できる詩が多くあることを知り、ぐっと身近に感じていただける機会となりました。