平成17年度行事報告(上半期) ◎読書講座「武者小路実篤の純愛小説    「愛と死」を読む」*2回連続 講師:瀧田浩氏(二松学舎大学講師) 日時:平成17年5月22日・29日(日曜日)     午後1時30分から3時30分 会場:実篤記念館  「愛と死」は、物語として完成度が高いとしつつ、実篤文学の特徴である強い思想の吐露がないことを指摘。他の実篤の恋愛小説との比較や、執筆時の時代背景と作者の状況などを分析し、「愛と死」という作品の位置付けを考察。20代から80代まで、受講者個々の捉え方の違いも反映し、講座の内容がいっそう興味深いものとなりました。 ◎邦楽ミニコンサート 演奏:邦楽アンサンブル 花筏 日時:平成17年6月5日(日曜日)    午後1時から2時 会場:実篤記念館 曲目:さらし風手事、二葉のかほり、赤とんぼ、みずうみの詩、黒田節変奏曲、麗韻、春の海など  例年、実篤公園の菖蒲が咲く頃に開催しているミニコンサートです。40名の参加者がありました。会場が広くない分、演奏を間近でお楽しみいただきました。 ◎「作ってみよう! 〜梅ジャム〜」 講師:伊藤陽子(事業団主任学芸員) 日時:平成17年6月11日(土曜日)・12日(日曜日) 午後1時から4時 *同内容で2回 会場:実篤記念館、東部公民館  二日間で28名が参加しました。講座を通して、子どもから大人まで様々な人と一緒に一つの事に取り組んだのがよい経験となった、という声が寄せられました。 ◎美術鑑賞講座「ロダンの芸術」 *2回連続 講師:泰井良氏(静岡県立美術館・学芸員) 日時:平成17年6月22日・29日(水曜日) 会場:東部公民館、静岡県立美術館  フランスの彫刻家ロダンは、実篤ら白樺派の同人たちを魅了し、大きな影響を与えました。  本年度の美術鑑賞講座は、実篤記念館で秋に開催を予定していた「白樺派とロダン」展を一層深く理解していただけるようにと企画しました。講座一回目に講師のお話を聞いてから(31名参加)、二回目にはロダンの実物作品を見に静岡県立美術館・ロダン館を訪ねました(29名参加)。 <夏休み企画> ◎「作ってみよう! 〜私だけの本〜」*3回連続 講師:田尾明敏氏(NPO美術研究センター理事)、岡野暢夫氏(製本工房リーブル) 日時:平成17年7月30日(土曜日)・31日(日曜日)・8月4日(木曜日)     午後1時から4時 会場:実篤記念館、東部公民館  扉や奥付、落款も入った本格的な中身の制作から製本まで、三日間かけて本作りの一連の流れを体験する、小・中学生を対象としたこの講座は、本年で三回目となります。今年は定員の倍を超える応募があり、抽選の結果、6歳から10歳までの15名が参加しました。  今回から、筆ではなくスポンジや型紙を利用した絵具の使い方を紹介するミニ実演を取り入れ、子どもたちが表現の幅を広げる参考にしていただきました。  小さな子どもには少し難しい製本作業では、スタッフや協力ボランティアなど大人が手助けはいたしましたが、講座の時間内だけでどんどん上達していく子どもたちには、毎年驚かされます。  それぞれに工夫をこらした「私だけの本」は、8月11日から25日まで記念館閲覧室に展示しました。 ◎「実篤に挑戦!  〜筆と墨で絵をかこう〜」 日時:(春)平成17年5月14日(土曜日)・15日(日曜日)    (夏) 8月12日(金曜日)・13日(土曜日)     午前10時から午後4時 会場:実篤記念館  実篤がよく描いたような野菜や花を筆で描く恒例の講座です。春には延べ40名、夏には延べ74名の参加がありました。本年で六年目、今夏で十回目の開催となり、2、3歳の子どもからご年配の方まで、幅広い年齢層からご好評をいただいています。  作品は、春は5月15日から6月5日まで、夏は8月13日から9月4日まで記念館に展示し、来館者の目を楽しませました。 ◎《特別篇》「実篤に挑戦!   〜うちわに筆と墨で絵をかこう〜」 講師:菱沼陽土女氏(絵画講師) 日時:平成17年8月14日(日曜日)     午前10時から2時、午後1時30分から3時30分 *同内容で2回 会場:実篤記念館  延べ34名の参加がありました。講師から色の作り方や落款を押す位置などのアドバイスを受け、それぞれに満足のいく「うちわ」を仕上げることができたようです。 ◎「もっと知りたい!〜自由研究サポート〜」 日時:平成17年7月26日から8月23日の毎週火曜日 会場:実篤記念館  参加した小・中学生は延べ63名でした。実篤や白樺派、調布の歴史、昆虫や植物、工作などについて、毎回7・8名の協力ボランティアが、子どもたちの質問を一緒に考え、答えました。  中でも、実篤公園のシュロの葉で作るバッタやカタツムリに人気が集中しました。また、市内で見つけた昆虫の標本や、調布の歴史についての参考書なども開架していたので、宿題や研究に集中できたようです。  身近で、気軽に参加できるサポート講座として、これからもより充実した内容をめざします。 ◎《特別篇》「もっと知りたい!〜実篤公園の湧き水調べ〜」 講師:調布市環境部職員 日時:平成17年8月20日(土曜日)    午前10時から11時30分、午後1時30分から3時 *同内容で2回 会場:実篤記念館、実篤公園  今回がはじめての開催となります。延べ13名の参加がありました。  はじめに、実篤公園の湧き水の特徴などについて解説を聞いたあと、湧水・上の池・下の池ごとに採水と水温測定をし、最後に、試薬キットも使用しながら色度、濁度、水素イオン濃度、化学的酸素消費量、亜硝酸性窒素、電気伝導度の各項目を測定して、ワークシートに記入しました。  本年は、初回ということもあって講座の進め方などにやや反省点を残しましたが、参加者からは「実験が楽しい」という声が聞かれ、概ね好評をいただきました。記念館主催の行事としては珍しく、お父さんとの親子参加も目立ちました。幅広い層の方々に記念館に親しんでいただくためにも、改善を重ね、夏休み企画の一つとして定着させていきたいものです。 ◎開館20周年記念講演会「実篤ウィルスの危険性について」 講師:高橋源一郎氏(作家) 日時:平成17年10月16日(日曜日)     午後1時30分から3時 会場:調布市文化会館たづくり  実篤文学は、1細かいことを気にしない、2成長しない、3ジャンルにこだわらない、4性善説、という特徴をもつが、これは個の特異性と彼我の相違にこだわり先鋭化しようとする近代文学が進んできた道とは正反対。しかし近世以前には無かったこのあり方こそむしろ“近代文学ウィルス”と見ると、文学が一般の人にとって縁遠いものになってしまった現代、普通に生きる人にとって違和感のない実篤の文学は、それ以前の健全な状態とも言える、と指摘。実篤作品と現代との時代を超えた共通点を語られました。  定員100名のところ、171名もの応募があり、事前反響の大きな講演会でした。