平成15年度行事報告 ◎読書講座「自伝小説『或る男』に青春を読む」(3回連続) 日時:5月11日・18日・25日(日曜日) 午後1時30分から3時30分 講師:瀧田浩氏(二松学舎大学非常勤講師) 会場:旧実篤邸内講座室 文学作品を取り上げた特別展の関連企画として、展示と連動した読書講座を企画しました。 「或る男」は長編ですが、その中から特別展で取り上げた部分を中心に、関連作品や資料とともに読み込みました。 第一回では「初恋」をテーマに、初恋がそれまで自分だけの世界にいた実篤にとって本当の意味での他者との出会いであったと読み解きました。 第二回「友情」では七十年の親友・志賀直哉との出会いと関係の変遷をたどり、自分を認めてくれる存在を得たことが、内向的だった実篤を外の世界へ踏み出させる力となったと指摘されました。 第三回「夢」では、展示で取り上げた白樺創刊前後だけでなく、王様や政治家を志した少年時代から、後年の新しき村創設までを合わせて取り上げ、実篤の並外れた野心のベクトルの変遷をたどりました。 今回の企画では、一つの作品に展示と読書講座という異なった手法でアプローチを試み、今日興味深いものとなりました。 ◎ミニコンサート 日時:5月10日(土曜日) 午後1時半の回・午後2時50分の回 演奏:桐朋音楽大学学生 会場:記念館展示室 共催:桐朋音楽大学 演奏:清水 梨紗(ハープ) 松本 和子(ソプラノ)、他  武者小路実篤が活躍した大正時代の音楽と文学の接点をトークで紹介しながら、当時の代表的な曲を演奏しました。 仙川の大学との共催で、記念館と地域との連携の第一歩となりました。 ◎講座「作ってみよう!ジャム作り」 日時:6月14日(土曜日)、15日(日曜日) 午後1時〜4時※同内容で二回開催 講師:伊藤陽子(当館学芸員) 会場:事前の反響が大きかったため、当初一回の予定でしたが、急きょ二回に増やしての開催となりました。 講座では、まず実篤記念館の中庭で新しき村から贈られた梅の実を収穫し、それから東部公民館に移動して調理しました。 参加者には小学生も多く、収穫もジャム作りも初めてという方もいて、慣れない作業に、親子で、また一緒に参加した方と協力しあう姿も見られました。 調理の合間には梅の木の由来についての解説も行い、新しき村に関心を持たれた方も多く、行ってみたいとの声もあり、読書講座などとはまた違った角度から実篤に興味を持っていただく機会ともなりました。 ◎講座「つくってみよう!私だけの本」 日時:8月2日・3日・7日 午後1時半〜3時 講師:岡野暢夫(製本工房リーブル) 会場:実篤記念館 小学校1年生から4年生まで11名が参加しました。1日目は本のしくみについて説明を受けて下絵を描き、2日目には6枚の紙に絵とお話を書き、3日目にはそれを製本して自分だけの本をつくりあげました。 はじめは慣れない環境にやや戸惑った表情でしたが、お話を考えたり絵を描いたりするのに夢中になる姿も見られました。製本作業では紙を折ったり切ったりという作業に四苦八苦しながらも、最後には奥付と表紙も付けて、豪華な絵本ができ上がりました。 講座終了後は作品を8月15日から24日の間、閲覧室で展示。 ◎講座「うちわづくり」 日時:8月15日(金曜日)  午前10時から12時・午後1時半から3時半 講師:菱沼陽土女(絵画講師) 会場:実篤記念館 午前午後あわせて47名が個性豊かなうちわ作りにチャレンジしました。「うちわ」に絵を描くのも消しゴムをカッターで彫るのも勝手が違って難しかったようですが、出来あがった作品に皆であれこれ言い合うほほ笑ましい姿がみられました。 ◎講座「実篤に挑戦!」(春・夏) 日時:5月17日(土曜日)・18日(日曜日) 8月16日(土曜日)・17日(日曜日) 各日午前10時から午後4時 会場:実篤記念館 5月は58名、8月は117名が参加しました。「挑戦」もすっかり記念館の春夏の恒例行事となっています。皆花や野菜を熱心に見つめながら筆を運び、近くに座った人と「そのナスの色はどうやって作るんですか」と話したり、のんびりした雰囲気でした。 ◎講座「聞いて・見て・楽しむ会」 日時:8月23日(土曜日) 午後2時から4時 講師:岩井貞雄(元専門員) 会場:実篤記念館 当館ボランティアも参加し、皆熱心に講師の話に耳を傾けていました。 今回は「個人記念館とは個人を偲ぶだけではなく、その場所に行くと個人を感じられる」場所であることが大切という話から始まり、前半は実篤にまつわるエピソードを聞き、後半は展示「人間万歳」を見ながら理解を深めました。 ◎自然観察会(秋) 日時:11月1日(土曜日) 午前10時から12時:初心者向  午後1時30分から3時30分 講師:冨田広氏(ネイチャリスト、自然観察指導者) 場所:実篤公園及び周辺緑地  初心者向けでは、実篤公園の身近な自然に触れ再発見するとともに、中級者向けでは、周辺の国分寺崖線の自然も観察し、公園に残る地形、湧水、植物の大切さを実感した。 ◎工作講座「作ってみよう」 日時:11月15日(土曜日)午後1時30分から3時 講師:渡辺由美子氏(ねこじゃらし代表) 場所:実篤記念館 昨年に引き続き、工作を通じて、自然に親しみ、物作りの楽しさを体験していただく講座を開催しました。 今回は、松ぼっくりにヤブミョウガやヘクソカズラなど色とりどりの実をはりつけたクリスマスツリーと、ドングリをくりぬいた笛を作りました。 参加者は慣れない手つきながら、「ねこじゃらし」のメンバーにちょっとしたコツを教えてもらい、配色やデザインに工夫して思い思いの作品を仕上げ、親子兄弟や参加者同士で出来栄えを見せあっていました。 ◎協力ボランティア基礎講座 第4回「ボランティアとは?」9月24日 講師:大脇正昭氏(コミュニティ・プロデューサー) 講師の体験談を通して、ボランティア活動に参加する心がまえやあり方を考える 第5回「父・実篤を語る」10月29日 講師:武者小路辰子氏(実篤三女) 娘の眼から見た父・武者小路実篤の人柄、家での素顔を紹介。 第6回「実篤記念館のボランティア」(ワークショップ) 11月26日 協力ボランティアのための基礎講座最終回。講座を通して実篤記念館でのボランティア活動について考え、参加者の希望や意見をまとめる。 この講座に参加した18名が協力ボランティア登録し、1月より活動を開始した。 ◎美術鑑賞講座・実篤から始めよう 「レンブラントとゴッホを視る」 日時 : 平成15年11月6日・13日・20日  午後1時半から3時 講師 : 下向惠子氏(画家) 会場:記念館閲覧室および美術館 実篤の詩、レンブラントとゴッホへの賛歌を導入にして、実篤のつねづね語った美術鑑賞の態度「本物から学ぶ大切さ」を実感するために、美術展見学を加えた講座です。  「版画」の技法についての講義を中心に据えたことで、「作品を漫然と眺めるのではなく、鑑賞の基準ができて有意義でした」という感想が多数でした。 ◎講座「作ってみよう!〜本を作る」 日時:1月21日・2月4日・18日・3月3日(水曜日) 午後2時から4時 講師:岡野暢夫氏(製本工房リーブル) 会場:東部公民館 実篤の文庫本を改装して、オリジナルの豪華本を作るところから、絵本、平綴、和綴の製本技術を学ぶ講座です。 ほとんどの方は初めての体験で、慣れぬ作業に四苦八苦しながらも、本作りの楽しさを感じられたようです。 講座終了後、参加者の作品を4月10日から30日の間、閲覧室で展示。 ◎講演会 記念講演会「おれの武者小路実篤」 日時:平成16年1月24日(土曜日) 午後1時30分から3時30分 講師:原田宗典氏(作家) 会場:調布市文化会館 「たづくり」映像シアター 原田氏はまず、志賀直哉は父的、実篤は母的という分析から入り、実篤の三女・辰子さんから聞いた二人のエピソードを引き、それぞれの作品の書き出しを朗読して対比して、一面正反対でありながらある意味で共通すると語りました。 30代半ばで「真理先生」を読んでその新鮮さに驚き、それがきっかけで実篤を再発見し、以来次々に作品を読んで、多くのことに気づかされたといいます。 ご自身の作家としての経験から、実篤のように無造作に本心を書くということが実に難しいと話され、また古い新しいでなく“新鮮”ということが大切というお話しは、創作の普遍性を考えるキーワードとなるものでした。 実篤が好きで尊敬しているという思いが飾らない自然体のお話しから伝わる暖かい雰囲気の講演会となり、原田氏による実篤作品の朗読も味わい深く、参加者からも読んでみたくなったという声が寄せられました。 ◎朗読会「実篤を聴く」PART3 日時:2月8日(日曜日) 午後1時から2時30分/午後3時から4時30分(同内容で二回開催) 演出:川和孝氏(演出家) 会場:調布市文化会館「たづくり」映像シアター 今回で三回目の朗読会。たづくり展示室での実篤の生涯と幅広い活動をご紹介する内容にあわせた、実篤入門篇とした作品を選んだ。 第一部では「私の履歴書」より自身を語り、また、交友のあった人々の実篤人物像を書いた作品、自作「友情」を朗読した生前の実篤の声を紹介。 第二部では、「愛について」「人生論」、美術論、また、新しき村の創立当初の様子と村への思いを書いた「土地」を3人で読み継ぐなど、実篤文学、美術、新しき村と活動のエッセンスを聴く機会となった。 4人の表現力豊かな朗読は、実篤の文章や言葉の力強さ、意志をよく伝え、文字とは違った魅力、楽しみを引きだしていただいた。