調布市武者小路実篤記念館

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コラム泉

「コラム泉」は、実篤の思い出、実篤記念館の活動についてなど、
ゆかりの方々にご寄稿いただいたもので、
過去に館報『美愛眞』に掲載されたものを、再編集し掲載しております。

*日程や名称、執筆者の肩書きは、発行時のものです。

館報『美愛眞』29号 より2015年9月30日発行

地域に根ざして
藤倉正道
(調布市立第四中学校校長)

神代高校の生徒だった昭和44年(1969年)頃、部活のトレーニングで若葉の坂を使うことがありました。傾斜を利用したダッシュやウサギ跳び、腕立て臥せや腹筋など、体と心のどちらが先に弱音をあげるかというトレーニングを行うため、内輪では「しごき坂」と呼んでいました。しごき坂では「教科書に載っている有名人が近くに住んでいるんだぞ」という話や息を整えるつかの間に聞こえてくるチャイムを耳にして「すぐそばに学校があるんだね」などと話をしたことがありました。国語の教科書を探して「この人が住んでいるのか」と訳も無く感動しました。1年生の体育祭で大怪我をして運動ができない日が続き、坂を下ることが無くなってからは自然と話題から遠のき、それから長い年月が過ぎました。

懐かしい青春の思い出が湧いてきたのは、「調布市立第四中学校へ異動です」と連絡を受けた時でした。不思議な縁を感じ、居ても立ってもいられなくなり日曜日を使って周辺を散策に訪れました。道幅が広がり、きれいに舗装されたしごき坂、木々に囲まれて分からなかったのですがこんなに学校が近いと改めて知りました。息を切らせながら坂を登り、仙川駅まで歩きながら当時女子に人気のあった喫茶店・日東紅茶や部活帰りに空腹を満たしてくれたラーメン屋さんの面影を追ったのですが、時の流れを感じた散策となりました。

「地域を知らずして語るなかれ」との思いから着任早々かつて訪れることができなかった武者小路実篤記念館に足を運びました。時が過ぎてしまったことを悔やみながら見学を終え、この地から育つ子どもたちや縁あって着任した先生たちにはぜひ知って欲しいとの思いから交流を模索することにしました。

まず取り組んだのは小中連携の研修を活用し、四中や若葉小に異動してきた教員を中心にした地域理解です。東部公民館の教室をお借りして学芸員の方から武者小路実篤の生涯を伺い、記念館・公園に移動し、実物に触れながら学ぶ時間を持ちました。この交流は教員の異動を考えて7年間に2度実施してきました。

我が町のことを胸を張って語れる大人に育って欲しいと願い、全面的なご協力で実施していただいているのが卒業を控えた3年生への特別授業です。今年で3回目になる交流事業ですが、今後も大切に続けていきたいと考えています。

更に、今年新たに中学生ボランティアの受け入れについてご提案を受け、毎年実篤記念館で行っている夏休み企画の「実篤に挑戦!〜筆と墨で絵をかこう〜」と「実篤マンホールで拓本を体験しよう!」の2つの行事で、本校生徒6名が活躍しました。また、教員の初任者研修や10年経験者研修でも社会体験の場をご提供いただいています。これからも地域の記念館として様々な交流の場を持ち、生徒たちの育成にご協力をよろしくお願いいたします。