調布市武者小路実篤記念館

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トピックニュース

「トピックニュース」は、実篤記念館の事業活動をご紹介する記事で、
過去に館報『美愛眞』に掲載されたものを、再編集し掲載しております。

*日程や名称、執筆者の肩書きは、発行時のものです。

館報『美愛眞』11号 より2006年10月1日発行

子どもたちに豊かな実体験を
〜学校教育との連携を進めています〜

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当館のような博物館施設の特徴は、さまざまなことを実際に体験できることにあります。本物の美術作品を鑑賞することや、文学作品を読むこと、調べ学習や、絵や工作などの実技をとおして、経験の幅を豊かにしていただけるよう、事業を企画しています。特に、教育機関として、学校教育と連携し、子どもたちへの機会の提供に力を入れてきました。

毎年夏休みには、絵本作りや自由研究サポートなど小中学生を対象とした講座を開催しています。昨年度からは隔年で実篤の代表作「友情」に因んで「ともだち」をテーマに、小中学生の作文募集を始めました。こうした行事の周知や実施には、学校にご協力をいただいています。

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昨年は、毎年新シリーズを作成している解説シート「もっと知りたい」を若葉小学校の先生と協力して編集し、でき上がったシートを4〜6年生の授業で教材に使っていただきました。

また、学習に活用してもらえるよう、市立中学校には平成16年度に、当館の図録など刊行物と、友の会からの寄贈により実篤の著書を配布し、図書室に配架しています。今年度はこれを小学校へも広げ、近刊の『実篤画文集』や三女・辰子さんの著書『ほくろの呼鈴 父・実篤回想』などを追加します。

館や公園の授業への利用も、近年増えてきています。

徒歩5分ほどのところにある若葉小学校では、7年前から実篤記念館と公園を5年生の学習で活用しています。

指導された図工の小林朝子先生に、今年度の授業について、成果を伺いました。

1週目は記念館で特別展「心豊かに」を見学。じっくり鑑賞し、考えるきっかけとして、好きな言葉と絵を選んでその理由とともにワークシートに書かせます。その後実篤公園で、実篤に倣って色紙をかきます。竹や筍、花菖蒲などから心ひかれたものを薄墨ペンで写生して、詩を作ります。学校へ帰ってから、顔彩や固形絵の具で色付けし、消しゴム判子を作って捺して完成。でき上がったら、感想を書いたり、友達と作品を見せ合って一言感想をもらったりして、交流を深めます。

普段、教室ではおちつかない児童でも、記念館や公園では、不思議なくらい静かになります。「やすらぐ」「おちつく」という子が多く、緑豊かで静かな環境を全身で受け止めているようです。

展示の見学で好きな言葉を選ばせると、「生きることは不思議」「我は生きぬく」「君は君…」などに意外なほど深い理解を示していて、驚かされます。難しいように思っても、子どもは理屈ぬきで丸ごと受け止めて、吸収してしまいます。

写生で公園に行くと、子ども達はまず豊かな緑や花菖蒲の美しさに歓声を上げます。でも、かく時は教室よりずっと集中して、「学校でかくよりうまくかけた」という子もいます。

でき上がった色紙を見ると、花菖蒲や竹や筍に自分の気持ちを重ねたり、親子や友達になぞらえたりしています。実篤の世界を感じ取って、それを自分でも表現しているのです。これにはあの空間がとても大事で、子どもたちが素の自分と向き合う場になっています。

実篤記念館では、これからも子どもたちに豊かな実体験の場を提供できるよう、学校教育との連携を進めて参ります。