調布市武者小路実篤記念館

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トピックニュース

「トピックニュース」は、実篤記念館の事業活動をご紹介する記事で、
過去に館報『美愛眞』に掲載されたものを、再編集し掲載しております。

*日程や名称、執筆者の肩書きは、発行時のものです。

館報『美愛眞』20号 より2011年3月31日発行

『武者小路実篤全集未収録書簡集』刊行

平成22年度に開館25周年を迎えたのを機会に、『武者小路実篤全集未収録書簡集』を刊行しました。

当館は、開館以来、武者小路実篤に関する情報センターとしての役割を果たすために、関連資料および情報の収集に努めて参りました。その成果の一つとして、書簡一七八一通、うち実篤書簡七九七通を収蔵しています(平成23年2月末現在)。

これらは、武者小路家はじめ多くの方々による寄贈、また寄託や長期貸与と、調布市美術作品等収集基金による購入によって収集したものです。

その中には、1991年4月に刊行された小学館版『武者小路実篤全集』第18巻「書簡篇」に収録されていないものが、一七〇通余りあります。これらは、実篤の作品や活動を理解し、また人となりを知る上で、貴重な情報を含んでいます。すでに特別展や企画展で展示し、また特別展図録に掲載したものもありますが、多くは未公開となっていました。

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志賀直哉や河野通勢ら、白樺同人や親しい作家・画家らに宛てた手紙を注意深く読むと、一人一人の相手の気持ちを気遣っており、おおらかに見られがちな実篤ですが、神経の細やかな面があったこともうかがわれます。

佐藤春夫宛と斎藤茂吉宛の手紙は、時代は違いますがいずれも実篤が主宰した雑誌への寄稿を依頼したものです。

編集者宛ての手紙も多く、昭和初期の〝失業時代〟には、実篤に原稿を売り込み、稿料の前借りを頼む時期があったことが偲ばれます。

新しき村の会員たちに宛てた手紙からは、様々な構想や経済的な問題など村の運営に関する事情が分かるほか、個々の会員の想いに向き合う実篤の姿が見られます。

家族宛の手紙は、昭和5年〜35年まで72通が収録されています。三十年の間に夫、父、祖父と広がっていった実篤の立場が投影されており、手紙の実篤は、自ら言うとおり、子煩悩、爺馬鹿そのもので、仲の良い家族の様子が伝わってきます。

当館では、書簡を新たに収蔵した場合、その都度翻刻しています。この書簡集は、日々地道に積み重ねてきたこうした資料整理と調査・研究の成果です。

今回は当館が収蔵する実篤書簡に限りましたが、他の文学館や個人が所蔵するもの、また刊行物等に図版が掲載されたものなどについても、情報を収集・蓄積しています。また、実篤に宛てて書かれた書簡も一〇〇〇通近くを収蔵しており、これらについても、翻刻を整備していきたいと考えております。